第11章 疑惑の研究所
…さっきその言葉を聞いて、あたしちょっとほっとしたの。
ローは、あたしを忘れてたわけじゃなかった。
ちゃんと覚えていた。
あの島で、あの森であたしに出会ったことを、忘れていなかった。
それはよかったんだけど。
…あの瞬間、別の痛みが強烈にあたしの心を貫いたの。
ハートの海賊団に入れて欲しいと思ってるわけじゃない。仲間になれると思ってたわけじゃない。
だけど。
──昔の、知り合い。
それは暗に、今の彼とは関係無いと言っていて。
彼の中で、あたしはとうの昔に、過去のものとなっていて。
あたしはその言葉以上でも以下でもなくて。
たったそれだけの存在だったと──そう、言っていた。
きっとローは何でもない事実を述べただけのつもりなんだろう。だけど、あたしにとってそれは、どうしようもない拒絶の言葉で。…身を引き裂かれるくらい痛い言葉だった。
あたしがこんな風に思ってたこと、あなたは全然知らないんでしょうけど。
ローがそんなんじゃ、"あなたに会いに来た"なんて。あたし、死んでも言えないじゃない。
「…自由に、なりたかったの」
彼の顔は、見れなかった。