第11章 疑惑の研究所
ローは壁も天井も床も真っ白の小さな部屋で足を止めた。
そして、地面に降ろすや否や、またぺたりと座り込んでしまったあたしを見下ろして、こう聞いたのだ。
「なぜ海に出たんだ」
例の如く、鋭い眼光で。
「…なぜって…そんなの」
まあ初めは成り行きというか、不可抗力というか。気付いたらグランドラインまで出ちゃってたんだけど。
ローが聞きたいのはそういうことじゃないよね。
なぜこんなところにいるのかって。
なぜここまできたのかって。
あたしは不思議な思いで、無言で見下ろしてくるその人を見つめる。
何でそんなことを聞くの?って逆にあたしが聞きたい。そんな分かりきったことを。
あたしが何でこんなところに用があると思うのよ。
あたしだってこんなところ来たくなかったよ。こんな、不穏な島。
だけど仕方なかったんじゃない。
来なきゃいけなかったんじゃない。
…あなたを探してたんだもの。
そう言おうとして口を開いたとき。
『──昔の知り合いだ』
不意に、さっきのローの言葉が耳の奥でこだました。