第10章 再会
「トラちゃん!!!」
聞こえた声にハッとしてうつむいていた顔を上げると、すぐ近くまで海兵が走ってきていた。あたしの少し前ににいたはずのローは、いつの間にか遥か前方にいる。
あたしが一人で落ち込んでいる間に、彼はますます海兵の中に踏み入り、戦況を動かしているようだった。
その間に、この海兵さんは喧騒に紛れてここまで走って来た…来てくれたらしい。
「トラちゃん!!こっちだ早く逃げよう!」
切羽詰まったようにそう言って、あたしの腕を掴んで立たせる。
あぁ。そうか。
この人の目には、あたしは"七武海トラファルガー・ローに攫われた子"に映ってるんだっけ。
なんてぼんやり思ったところで、あたしは海兵に強い力で腕を引かれて思わず悲鳴を上げる。
「いたっ…」
「ごめんな!だけどちょっと我慢してくれ!」
いやいや、力加減ってものがあるでしょう!
我慢しろって言うけど、腕、めちゃくちゃ痛いんだけど!!
握りつぶす気なんじゃないかってくらいの力でつかまれ、半ば引き摺られるようにして走りながら、あたしはそれでも何とか海兵さんに伝えようと顔を上げた。
──ちゃんと言わないと。
あたしの追いかけてた人はあの人なんです。
だから、逃げたりはしないんですって。
まあ当の本人があたしのことを覚えてるかっていうなんとも惨めな疑問にぶち当たってるところなんだけど。…それはこの際どうでもいい。
とにかく、彼を見つけてしまったからには、あたしはもう海軍と一緒には行けないの。
船に乗せてもらって自分勝手だとは思うけど、初めからあたしの目的はあの人に会うこと、それだけだから。