第10章 再会
そのあとのローは、驚くほど冷静だった。ついさっきまで固まってた人とは思えないくらいに。
あたしが乗ってきた海軍船を真っ二つにぶった斬り、走っていく麦わらの一味(と思うんだけど)に何やら攻撃を仕掛ける。
ここまでわずか数秒の出来事だった。
彼の行動にはおそらく色んな意図があるんだろうけど、あたしにはちっとも分かんない。
だから、あたしは放心状態でローの独壇場を見つめるしかできなかったの。
彼は、後ろにいるあたしのことなんて、もう忘れてしまったかのようだった。
前方の海兵たちと話す様子は余裕気で。
たった今、あたしと6年ぶりに会っただなんて、微塵も感じさせない飄々とした態度。
もちろん一度も後ろを振り返らない。
そんなローを見ていると、さっき彼と念願の再会を果たしたのは気のせいだったんじゃないかという気すらしてくる。
全部あたしの幻覚で、実はローはあたしなんて一回も視界に映してなかったんじゃないか、と。
普通、感動したり……は彼に限っては無いとしても、もう少し動揺したりするもんじゃないの。
と思って、ハタと気づいた。
──どうして、ローがあたしのことを覚えてるなんて思ってたんだろう?
もしかして、全部忘れてしまってるんじゃないだろうか!?
よくよく考えれば、いや、よくよく考えなくても、あの頃からもう6年も経ってるのよ。
ローと最後に会ったとき、あたしはまだ13歳で、身長だって小さかったし、髪も今ほど長くなかった。多分、少なからず顔も変わってるはずだ。
さっき驚いたように見えたのも実はあたしの見間違いで、そもそも誰か分かってなかったりして。
それで固まってたんだったりして…!!
あたしはそんな恐ろしい考えに辿り着いて、ローの後ろ姿をじっと見つめた。
…あたしは一目で分かったのに。
悔しくて、そしてちょっと、いや、とても心が痛かった。