第10章 再会
ものすごくびっくりしてしまって、ただ目を見開くことしかできない。
声が聞こえて、瞬きしたらここだった。ずっと追いかけていた人の顔が、手を伸ばせば触れられるとのころにある。
あの頃より少し、いや、だいぶと大人びた気がするけど、蜂蜜みたいなとろりとした金色の瞳も、すっと通った鼻筋も、骨ばったシャープな輪郭も、全部見間違いようがなくて。
間違いなく、あたしが会いたかったその人で。
その現実をすぐに受け止めきれず、あたしはただただ見つめるしかできなかった。
一方、そんなあたしを受け止めた人──ローも、自分で引き寄せたくせに、腕の中のあたしを見て驚いているようだった。
いつも険悪な雰囲気を醸し出していた金色の瞳が、軽く見開かれる。
相変わらず表情に乏しいのは変わりなかったから、何となくそんな気がしただけかもしれないけど。
お互い見つめ合ったまま何も言わない。
あたしは一瞬夢かと思ったけど、ローももしかしたらそう思ってるんじゃないかと思った。
それくらい、奇妙な沈黙が流れて。
「トラちゃァァん!!逃げろォ!!」
「そいつは危険な奴なんだよ!!」
「おい、お前トラちゃんを離せ!!」
「その子に触るなァァ!!!」
あたしは海兵たちの悲鳴にも似た叫び声に、ハッと目を瞬かせた。そして、自分の状況を思い出す。
…ど、どどどういうことこれは!?
何であたしはローに、お、おおお姫様抱っこされてる!?
ローは大勢の海兵たちと向かい合う形で、立っていた。
だから、必然的にみんなの注目は彼に、そして、その人が抱えているあたしに向くわけで。
ロマンチックな状況じゃないのは分かりきってるだけに、この状態が居た堪れない。
だって一部は騒いでるけど、海兵たちのほとんどはぽかんとしてるもん。
そりゃそうだ。
船の中にいたはずのあたしが、いつの間にか敵の──七武海トラファルガー・ローの腕の中にいるんだから。