第10章 再会
トラちゃんが不服そうな顔をしながらおれたちを見ているが、ごめんな、こればっかりはどうしようもねぇ。
だってついさっき、スモさんもたしぎちゃんも、トラちゃんを船に置いていくっていう判断を下しただろ。
じゃあそれはもう決定事項で、おれたちにはどうすることもできねぇんだ。
一海兵に過ぎないおれたちは、あの人たちに文句は言うが絶対に逆らえねぇから。そこを分かってくれ。
たしぎちゃんが彼女を連れて船内に入って行った後、おれは島の方を見て一瞬震えた。
言っておくが、恐れじゃねぇぞ。
武者震いってやつだ。
…あと、単純に寒かったのもある。
「なんつー島だよ」
思わず声に出してつぶやく。
おれたちが侵入したのは島の片側、氷の大地からだった。
まあ、炎の中歩くよりはこっちの方がマシだよな。
炎側から侵入したやつがいるなら、顔を見てみたいもんだ。
だが、そうは思ったものの、氷の大地も決して易しいものではない。
雪が積もった地面は歩くのも大変だがその上に、体温と体力が同時に奪われていくのが厄介だった。
吐く息が白いどころか、口から出た瞬間に凍り始めているんじゃないかっつーくらいの極寒の地。
寒さで凍てつく足を必死に動かし、サクサクと雪を踏みしめて船から降りていくと、さほど歩かずに前を行く海兵たちが立ち止まった。
船から十分見えるところに、研究所の入り口があったからだ。
…よかった。
トラちゃんからそう離れないですむ。
おれはそう思って一人安堵する。
こんな島で船内に一人で放っておくのは流石に可哀想だから。
たしぎちゃんに連れていかれた時の、捨てられた子犬みてぇに潤んだ瞳を思い出す。
可愛いかった……じゃねぇ、間違った。可哀そうだった。
悲しそうな彼女の顔を思い出して思わず頬を緩めていたおれは、門の前に立っている男にしばらくの間気が付かなかった。
周りがざわざわと騒ぎ出してから、やっとその存在に気づく。
お、おい、もしかしてあれは──!?!?