第10章 再会
一人でパクパクとおにぎりを食べ続け、最後の一欠片を口の中に放り込んだ、ちょうどその時。
ワアアアアアアッ
突然、一際でかい叫声が上がった。
多分、いや、間違いなくこれは海兵たちの声。
…そんなに大きい声をあげて何なの。
あたしはおにぎりを飲み込んで、耳を澄ましてみる。
だけど、船内からじゃ、かろうじて声が聞こえるくらいで、何を言ってるのかまでは聞き取れない。ただならぬ事が起こってるのは確かみたいなんだけど。
少し迷ってから、あたしは意を決して立ち上がった。
荷物の中から、あたしが持っている服の中では一番あったかい、白のもこもこしたジャケットを取り出すと、着ていたパーカーを脱いでそっちに着替える。
中将もたしぎさんも、「船にいろ」としか言わなかったもんね。船室の中、じゃない。
あたしはそんな屁理屈を思いついて、甲板まで様子を見に行こうと思ったのだ。
甲板までなら、ぎりぎり「船にいる」ってことになるはずだ。約束は破ったことにはならない。
自分の思いつきに満足して、ふふんと笑顔になる。だけど、ちょっと考えてから、キャスケット帽の上からジャケットのフードをかぶった。
どうしてこんな泥棒のような気持ちにならないといけないのか分からないけど、堂々と出ていく気にはなれなかったから。
──ちょっと見て、何事もなかったら戻ってこよう。それくらいなら、別にいいはずよね。
あたしはそう自分に言い聞かせて、部屋を出た。