第1章 夢
目をそらして早々にこの話題を変える方法を探す。話しても埒があかないのはいつものこと。
そう思ってあたしははた、と気づいた。
「あ、そう言えばシスター。ジョナサンの受け入れ先は見つかった??」
ちょうどいい話題があってよかった。
そう。1週間前までは14人の兄弟だったけれど、この1週間で一人孤児が増えて、今この教会には15人の子供たちがいる。
これはあたしの知る限り最多だった。
しかも10歳以下が13人で、内7人が5歳以下。
シスター1人に対してこの数は、他の教会でもなかなかあることではない。
金銭的にも養い手の数的にもまったくと言っていいほど足りていなかった。
うちみたいな教会から比較的余裕のある教会に子供たちを移動させることは、ノースブルーではよくあることだ。
だから、数日前からシスターは、1週間前に加わった一番末っ子ジョナサンの受け入れ先を探して各教会に電伝虫をかけていたのだ。
「あ、そうね。そうそう。それも今日話そうと思っていたのだけれど。ちょうど見つかったのよ!」
そっちの方がよっぽど大切な話じゃないの。
思わずずい、と身を乗り出して続きを急かす。
弟の新しい家族がどんな島の、どんなところの人か気になる。できれば会いに行きたいところ。
「どこ?どこの教会?」
「ここから少し遠いけど、パール島の教会よ。」
…パール島?
パール島って確か、ミドル王国の最東端の島じゃなかったっけ?ここからだと船で片道3日半くらいかかる。
しかも、最西端のミカヅキ島から最東端まで乗り継ぎなしで行ける船は月に一回。
その他の便だと何回か乗り継がないと行けなくなるし、その分旅も長くなる。
ジョナサンはまだ幼いから長旅はきっと難しいだろう。
と、なると…。