第9章 マリージョア
雲すら掴めそうなくらいの高度まで到達すると、ゴンドラはぴたりと止まった。
シャボンに包まれていないゴンドラの出口から、海兵たちに続いてレッドラインに降り立つ。
そして。
──あたしは息を呑んだ。
レッドラインのその広い敷地には一面の緑の森があった。
その森を切り裂くようにして伸びる真っ直ぐの長い道。
そして、その道の先には、あたしたちを見下ろすように高くそびえ立つ、荘厳かつ豪壮なる、一つの城があった。
「ここが聖地マリージョア。正面に見えるのがパンゲア城ですよ」
たしぎさんがまた親切にも説明してくれたけど、あたしは満足に相槌を打つこともできなかった。
ただ、正面に見えるその城を見て固まることしかできなかったの。
──あたしは、ここを知っている。
なんでだろう。
来たことなんかないはずなのに。
呆然と立ち尽くすあたしの近くを海兵が通る。
「トラちゃん、どうした!?」
「え?」
海兵に驚かれて、あたしは自分の頬を触る。そして、初めて濡れていることに気づいたのだった。