第9章 マリージョア
レッドラインの岩壁に当たって白波立つ海。
その海に浮かぶ海軍船はみるみるうちに点となり、やがて見えなくなった。
そして、代わりに空が近づいてくる。
ふと振り返ると、レッドラインの反対側、広大な大海原は夕日で金色に煌めいていた。
「きれい…」
思わず口に出してから、あたしはこの大海原を常に一望できる場所に住まう一族のことを考えた。
まるで、この世界が自分たちのものであるかのように、全てを見下ろせる位置に居を構える彼ら。
良い噂は聞かない。
だから会いたいとは思わない。
だけど、どんな人たちなのか少し興味がある自分もいて。
あたしには一生縁がないと思うから余計なのかもしれない。
マリーと共に初めて天竜人なる一族を見た日には、まさかあたしがこんなところに来るなんて夢にも思わなかった。
だけど、今はすぐそこに、まさに目と鼻の先に彼らの本拠地がある。
そう思うと、あたしはこの旅の奇妙さを改めて実感するのだった。