第9章 マリージョア
「トラちゃん、足元気を付けてな」
「おれが荷物持とうか?」
「いや、なんならおれがトラちゃんごと運んでやるぜ?」
潜入がバレた当初は警戒してた海兵たちも、あたしがこの船にいていいとスモーカー中将が判断を下した途端、あからさまに親切にしてくれるようになった。
ちょっと過保護すぎるんじゃない?ってくらいに。
「あの、大丈夫です。あたしこう見えても結構力あるんで」
そう笑ってみせると、だらぁっと溶けそうな笑顔を向けられる。
旅を始めた当初は絶対に少年スタイルを崩さなかったけど、最近はどちらかというと女の子の格好をしている方が多い。
捕虜にでもなってなければそんじょそこらの海賊には負けない自信もついたし、逆に女だとなめられた方がうまくいくことも多かったからね。
それになんて言ったって、この辺りはあたしの故郷と違ってかなり暑くて、体形を隠せる服なんてとてもじゃないけど着ていられないの。
だから今もショートパンツにキャミソール、上から黒のフード付きパーカーを羽織るというラフな格好をしている。
黒のキャスケット帽は絶対手放せないけど、髪を押し込めることも最近はしていない。ナーティがこっちの方が似合うって言ってくれたから。
そんなあたしは、海兵さんたちの目には荷物も運べない“か弱い女の子”に映っているらしい。
まあ確かに、さっきあれだけ泣き崩れたもんね、あたし。
女というだけで必要以上に気を遣ってくれる海兵たちの言葉は嬉しいようでちょっとこそばゆい。