第9章 マリージョア
スモーカー中将の顔はますます険しくなる。
なんて疑り深い人なの!?!?
まさかまさかと思ってたけど、この人なら海に放り出すこともするかもしれない!
そう思っていよいよ本当に号泣しそうになっていると、その様子が周りの海兵たちには大層悲劇的に映ったらしい。
「スモーカー中将!いいじゃねェかどこの島でも!」
「連れてってやろうぜ!!」
「たしぎちゃんもスモさんになんか言ってやってくれよ」
あたしを擁護するような言葉を口々に言い立てる。
それを聞いて、たしぎ、と呼ばれた女剣士も頷いた。
「スモーカーさん、ここまで来てしまってはどうせもう引き返せません。シャボンディ諸島まで戻るとなると麦わらの一味に追いつくのは難しくなるでしょう。ここは彼女を新世界の安全な島まで送り届けるのがいいのではないでしょうか」
彼らにはマリージョアに置いていくっていう選択肢はハナから無いようだった。
マリージョアは天竜人の住まう聖地らしい。
マリーと共に一度だけ見たことがある天竜人。
世界政府の創設者の末裔で、権力を恣にして人々を虐げている悪しき一族。
シャボンディ諸島より新世界の島より、この場所からはマリージョアが一番近いのに、その選択肢が一切出てこないということは、やはり海軍にとっては、天竜人の聖地は不可侵の領域ということだろうか。
スモーカー中将はしばらくあたしを睨んでいたけど、たしぎさんの言うことも一理あると思ったのか、少しの間沈黙する。そして、煙と共に大きく息を吐き出すと、そのままその場を立ち去ったのだった。
…あたしはなんとかレッドラインを越えることができるようだった。