第9章 マリージョア
──まずはあれに乗り込まないと。
もしかしたら”新世界”に向かわないかも…なんて、考えても意味がないことは脇に置く。
そりゃ、もう少し様子を見て、目標の船の海兵の話を盗み聞きするくらいはした方がいいのはあたしにも分かってるけど。
でも、そうこうしてるうちに出発しちゃったら意味がないじゃない。あとから、あの船が新世界に入ったのかも、なんて思っても悔しいだけ。
1年半、無鉄砲な旅を続けたせいか、度胸と思い切りだけは誰にも負けない自信がある。まあ、その分失敗も多いからそんなに褒められたもんじゃないけどさ。
そんなことを考えて、船の周りを忙しく動き回る海兵たちを見つめていると。
ドォォォオオオオオン!!
突然、地鳴りかと思うくらいの凄まじい音が響き渡った。
あたしは腰を抜かしそうになりながら、音がした方にじっと目を凝らしてみる。
ああでも、残念ながらここからじゃ何が起きたか全く分からない。
歯がゆい思いをしていると、それは、海兵たちも同じだったみたいで。何事かと船を離れて様子を見に行くのが見えた。
──何だかわかんないけど、これは千載一遇のチャンスなのでは!?
あたしは咄嗟に動いた。
地面を蹴って根っこから飛び出すと、できるだけ音を立てないように目標の海軍船の近くまで移動する。
そして、見張りの注意が他所を向いた一瞬の隙に、船に最も近い根っこの上を駆け抜け、一思いに海軍船に飛び込んだのだった。