第9章 マリージョア
「…まあだけど。乗せてください、はい分かりましたってわけにもいかないよね」
あたしは指を噛みながら、ヤルキマンマングローブの根っこから顔を出して、海軍船へ乗り込むタイミングを見計らっていた。
(ちなみに、シャボンディ諸島はこのヤルキマンマングローブの集合体でできている島だから、根っこがものすごく大きいの。直径ですら、あたしの身長よりはるかに大きいんだから。)
海軍船に乗ってしまえば、例え途中でバレたとしても酷い扱いを受けたり、よもやマリージョアに置き去りにされたりすることはないだろう。
彼らは曲がりなりにも"正義"を背負う海軍なんだから。そのあたりは海賊船に潜り込むよりリスクは低いはずだ。
おそらく、"新世界"の適当な島に着くまでは安全に運んでくれるんじゃないかな。
そこがどんな島でも、新世界に入れるなら多少の危険は覚悟の上だった。
だからあとは、どれが新世界に向かう海軍船なのか見極めさえすればいい。
そして、それについてもあたしはだいたい目星をつけていた。
あたしが狙うのは、もともとここに居合わせた海軍船ではなく、"麦わらの一味"の名を聞いて後からやってきて、かつ、出航の準備をしている船。
だってそれってつまり、ここにいるどの海賊にも興味なくて、“麦わらの一味”だけを追いかけてるってことじゃない?それなら、彼らが向かったとされる新世界へ追って入る可能性が高いはず。
そう思って、気の良さそうな人からそれとなく情報を集めて。
今42番GRにある目の前の船が、あたしの条件にぴったり当てはまる船、だったのだ。