第9章 マリージョア
──シャボンディ諸島 42番GR(グローブ)。
あたしはその海岸で息を潜めながら、さっきのレイリーの言葉を思い出していた。
『レッドラインを越える方法は二つある…。一つはキミが言うように魚人島を通り抜ける方法。そしてもう一つは…』
あたしは目の前の海岸に停泊している海軍船を見る。
「…聖地マリージョアを通り抜ける方法、ね」
この方法は、マリージョアの通行許可を得て大陸の上に引き上げてもらう必要があるから、普通、海賊には不可能とされている。
だけど、指名手配されていないあたしなら。
あるいは。
レイリーはそれ以上のヒントは教えてくれなかったけど、あたしには十分だった。そんな手段があるなら、あたしにも考えがある。
あたしは2人にお礼を言うや否や、荷物を引っ掴んで"シャッキー’s ぼったくりバー"を飛び出してきたのだった。
「教えてよかったの、レイさん。あの子本当に海軍船に乗り込む気じゃないかしら」
「…若者の無鉄砲は嫌いじゃないもんでね」
「フフ。ほんと、美人に弱いんだから」
「そう言うわけじゃないさ。…きっと私が教えなくても、娘さんは"新世界"へ行っただろう。そんな気がするよ」
「ええ…そうかもしれないわね。"新世界"で生き残るのは大変だけれど…。何故かしら、あの子ならきっと大丈夫な気がするわ」
出て行った後、2人の間でそんな会話がされていたことを、あたしは知らない。