第9章 マリージョア
「なるほど…。キミにもいろいろと事情があるようだな」
ぼんやりしている間に、シャッキーがあたしがここにいる理由を説明してくれたようだった。
レイリーは何やら興味深そうに唸ってから、やがてあたしの方を向いてフッと笑った。
「トラファルガー君には頂上決戦の時に何度か会ったことがあるよ」
うそっ!!
トラファルガー君って、あたしが探し求めているトラファルガー・ローその人のことよね!?
あたしはさっきまで萎縮していたことを忘れて、ずい、と身を乗り出した。
「ほ、本当に!?ローは、今どうしていますか…!?元気にしていましたか!?どこで…っ」
矢継ぎ早に言葉を発してしまってから、あたしは途中で気づく。
違う、と思った。
違う。
これは違う気がする。
レイリーから聞いても意味がない。
あたしが知りたいのは、人から聞いたローの話じゃない。
「…いや、やっぱりいいです。自分で確かめます」
自分に言い聞かせるようにつぶやいて身を引いた。
そりゃ確かに、どこにいたかくらい聞きたい気持ちはあるけど、それを知ったところで、ローはもう新世界に出てしまっているんだから意味がない。
それに、新聞や知らない人からローの情報を集めるのはいいけど、ローを知っている人から聞くのはなんだか違う気がした。
これはあたしの意地なのかもしれない。
だけど、ここまで来たからにはあたしは実際にローに会って、自分の目で確かめたいと思ったの。
彼の今を。
レイリーはそんなあたしを見て穏やかな笑みを見せてから、一つ頷いた。
「私もキミたちの物語に首を突っ込むのはよそう…。だが、一つくらいは手助けをしてやれるかも知れない」
きょとんと首を傾げるあたしに、彼は微笑を浮かべてこう言ったのだった。
「レッドラインを越える方法は何も一つじゃない。君のように札付きじゃなければ、な」