第9章 マリージョア
「"冥王"シルバーズ・レイリー!?」
あたしはワンテンポ遅れてその名を思い出し、素っ頓狂な声を上げて、今度はしっかり椅子から転げ落ちたのだった。
「おや、こんな若い娘さんにまで覚えてもらえているとは、その肩書きも捨てたものではないなァ」
わはははと楽しそうに笑うその人をあたしはあっけに取られて見つめた。
"冥王"シルバーズ・レイリーと言えば、かの有名なロジャー海賊団の元副船長で、ゴールド・ロジャーの右腕と言われた男ではないの!そんな人がなぜこんなところに…。
未だ椅子に座りなおせていないあたしにお構いなく会話は進む。
「じゃあ海軍もあらかたこの島から去って行ったのかしら」
「いや、まだかなり残っているな…」
「あらそう。残念」
彼らがいると少し窮屈なのよね、と呟きながら、あたしにオレンジジュースのお代わりをくれるシャッキー。
レイリーは何でもないようにカウンターに腰を下ろし、シャッキーはそんな彼の前にウィスキーを置いた。
まさか、ロジャー海賊団のクルーと肩を並べてバーのカウンターに座ることがあるなんて。
…これは、夢??
あたしは平然と続けられる会話にまだついていけてなかったけど、こんなこともある、とやや無理矢理に納得することにした。
だってそうしないと、後になって夢だったことにしちゃいそうなんだもん。