第9章 マリージョア
「珍しく可愛らしいお客だな、シャッキー」
突然後ろから声がして、あたしは椅子から転げ落ちるかと思うくらい驚いた。
「あら、後片付けは済んだの。…久しぶりね、レイさん」
シャッキーはニコニコと微笑んでいるけれど。
ちょ、ちょっと待ってよ…!
こ、この人今ドアから入ってきたの?
全く気配がしなかった!!
あたしは面食らいながら、ちょうど今入店した(と思われる)男性を見る。
精悍な顔つきの老齢の男性。
風貌といい、漂うオーラといい、この人は只者じゃないぞとあたしは息を呑んだ。
多分だけど、あたしが今まで出会った人たちの中で一番強い。
いや、多分じゃない、絶対。
だって、あたしこの人知ってる気がする。
新聞で何回も見たことあるんだもの。
そりゃ新聞に載ってたのはもっと若い頃の写真だったけど、今でもその面影が感じられる。
しかもシャッキーがさっきこう言ったじゃない。
久しぶりね、"レイさん"って…。