第9章 マリージョア
「それに、あなたトラファルガーちゃんのお友達でもあるんでしょう?」
私、あの子たちの世代好きなのよねぇと余裕な笑みを浮かべる女性。ますます不思議だ。
絶対にただのぼったくり屋さんなんかじゃない。
あたしの直感がそう言っていた。
だけど聞くのもなんとなく怖くて、黙ってオレンジジュースを吸っていると、シャッキーが少し楽しそうに続けた。
「あなた、新世界へ行くのが自殺行為なんて言うけど、こんなところまで能力者でもないお嬢さんがたった一人でやって来たのもなかなか自殺行為だと思わない?」
そう言われてあたしも改めて考える。
確かに、今考えるとよくここまで生きてこれたよな、と思う。
そりゃ辛いことは山ほどあったけど、命はこの通りとられていない上に、五体満足の健康体そのものでいられてるわけだから。あたし、相当運が良かったのかもしれない。
「それもこれも愛の力かしらねぇ。トラファルガーちゃん羨ましいわ」
ほぅっと悩ましげなため息をついて、意味ありげに視線をよこしてくる女主人。
あたしは到底同じテンションにはなれなくて、白けた顔でにべもなく答える。
「そんなことあるわけないじゃないの。あの人、あたしが死にかけてた時全然助けてくれなかったもん。あたし、この旅でその愛とやらを見失うところだったわ」
1年半も経てば人間ここまでやさぐれる。
もうビビにからかわれて赤くなってたあたしではないのだ。
あらそうなの?ってそれでも楽しそうに笑うシャッキーからわざと目をそらして、あたしはふぅ、と大きくため息をつく。
これからどうしようか。
何とかしてレッドラインを越えないといけないのに。