第9章 マリージョア
だけどあたしにもそうも言ってらんない事情ってものがあんのよ。
シャボンディ諸島に着くまでに死に物狂いで集めた情報では、ローがグランドライン後半、つまり、赤い土の大地(レッドライン)の向こう側に進出したのはつい最近のことらしいの。
何を思ったのか彼はずっと前半の海に留まっていて、後半の海、通称"新世界"には入っていなかったみたい。
事情は知らないけど、ローを追いかけるあたしとしては、これ以上ラッキーなことってないわけで。
だって、新世界に入ったのが最近ってことは、あと1つか2つ先の島にローがいるかもしれないでしょう?
あと数週間、ううん、あと数日で会える可能性だってあるんだから。
そう思ったら居ても立っても居られない心境で、すぐにでも出発したいところなんだけど、その手段が無い今となっては、返す返す麦わら一味と一緒に行けなかったのが悔しい。
ああもう!
どうしてもう少し早く着けなかったのよあたしは!!
あたしがここまで悔しがるのは、つまりそれだけ、新世界へ入るのが難しいからよ。
レッドラインを越えるには、海底一万メートルにある魚人島っていう島を通り抜けないといけないんだけど。
「あたしだってバカじゃないから、さすがに魚人島まで一人で行けるとは思ってないしね」
「あらそう。利口ね」
「そりゃあだって。新世界へ行こうとする奴らなんて、グランドライン前半でシノギを削ってきたツワモノの中の、さらに選りすぐりってことじゃない。そんなヤツらの海賊船に乗り込むなんて、自殺行為もいいとこだわ」
そう、ここからの海に出ていこうとする奴は、今まであたしが騙して乗り込んでこれたようなバカな海賊たちとはわけが違うのだ。
だから、ビビの友達っていう、これ以上ないお墨付きがある麦わらの一味と一緒に行けたならどんなによかったことか。
だのに、あたしはそのチャンスをほんの紙一重で逃してしまっていたなんて。