第9章 マリージョア
ふわふわふわ。
ふわふわ。
…シャボン玉が飛んでいる。
ふわふわ。
…あら、弾けて消えた。
………ほーんと、のどかねぇ。
ほんと、どこまでものどか…。
「…あぁーーーーーーーもう!!こんなことしてる場合じゃないのに!!」
突然絶叫して頭を掻きむしり出したあたしを見て、ショートボブの女性がカウンター越しにフフフと笑った。
「残念ねぇ。あと一時間早かったらモンキーちゃんたちと一緒に行けたかもしれないのに」
「言わないでよう。余計悲しくなる…」
がっくしうなだれても時は戻らない。
普段ならシャボン玉の浮かぶ島なんて目を輝かせて散策するところだけど、今のあたしにはそののんびり宙を漂うシャボン玉でさえ、どこか憎らしく思えてくる。
…そう、そうなのよ。
あと一時間、ううん、数十分早ければ。
あたしは窓の外をふわふわ浮かぶシャボンを眺めながら、憂鬱な気持ちで一つ、ため息を落とした。