第8章 決意
「今年のロータスの花嫁、ビビ様じゃないらしいぜ」
親友の声に、俺は思わずは?と声を上げる。
嘘だろ。今年はビビ様がやるってずっと言ってたじゃねぇか。それを今更。
「いや、まじまじ。なんか数日前に急遽決まったらしい。かぁちゃんが言ってた」
なんでも、うってつけの人が見つかったとか。
そんな風に言って、首を傾げる友人。
冗談じゃねぇ。
「ビビ様じゃねぇなら見に行くのやめようかな」
俺は思わずひとりごちる。
楽しみにしていたのに。
ビビ様はなんてったって、アラバスタ1の人気者だ。
明るい性格に、分け隔てのない態度。
あとついでに言うと、ものすごい美人だ。
国中の自慢であり、みんなが大好きな姫様だった。
そんなビビ様が今年のロータスの花嫁をすると聞いて、みんなビビ様の花嫁姿を楽しみにしていたに違いないのに。
それを急に変更だって??
「でもさ、どんな人が代役するのか、それも気にならない?」
友人は楽しそうに笑う。
気にならねぇよ!と声を荒げるところで、一瞬思いとどまる。
まあ、それも分からなくもないな。
一体どんな奴が代役をするのか。ビビ様の代わりをできるやつなんて、この国にはいねぇと思うけど。
「…まあ、それもそうだな」
年頃の男女はほとんど全員、ロータスの祭りに参加する。
別に想い人がいてもいなくても、花を浮かべるのは自由だ。もともとの祭りの目的は、恋の成就だけではないから。
俺の友人たちももちろん全員参加するはずで、がらんとした街に一人で残るのも味気ない。
そう思い直し、結局、俺は友人と共に昼過ぎにサンドラ川の会場へ向かったのだった。