第8章 決意
あたしはごくりと息を飲む。
海賊たちと対峙するときより緊張しているかもしれない。
なにしろこんな大勢の人の前に立ったことなんてないんだから。
「ほら、頑張ってね」
ビビが最後にぎゅっと手を握って、あたしを馬車から広場へ送り出した。
広場には数十人の兵士が警備をしていて、その周りには数え切れない程の人々がブルーロータスを持ちながら集まってきていた。
馬車から降り立った瞬間、集まる視線。
今までざわめいていた群衆が、しんと静まる。
…体に穴が開くんじゃないかと思った。
手に力が入らないし、足もふわふわしてちゃんと地面についてるかわかんない。
そんなに距離はないけれど、こんな状態でほとりまで一人で歩かないといけないのだ。
あたしは一つ息を吐いてから、ロータスを前に掲げるように持つと、一歩一歩群衆の中を歩き始めた。
緊張しすぎたせいで歩き方がぎこちなかったかもしれないけれど、そんなことを気にしてる場合じゃない。あたしはもう必死だった。
とにかく周りが気にならないように、ヴェールで見えにくい視界をさらに狭めるように目を細め、なんとか川のほとりまで到着する。
そしてビビに教えられた通り、一言二言、神様への謝辞を述べた。
よし、ここまでは完璧。
何もミスしてないはず。
そう思って、手に持ったロータスを浮かべようとした、その時──。