第8章 決意
今日は、年に一度の"ブルーロータスの祭り"というアラバスタの伝統的な祭りの日らしい。
アラバスタではブルーロータス(青スイレン)は雨のシンボルとされ、大切にされている。
そんなロータスを、願い事をしながらサンドラ川へ流すことで願いが叶う、と言われているらしい。
そして、一番初めに川へロータスを浮かべる人は、毎年国中の女性の中から選ばれ、"ロータスの花嫁"と呼ばれるそうだ。
数日前、早速旅のお金を稼ごうとしたあたしに対して、ビビが言ってきたのがこの"バイト"だったのだ。
本当は、今年のロータスの花嫁はビビが務めることになっていたらしいんだけど、どうにも本人がすこぶる乗り気でない。
というのも…。
「このお祭り、別名"恋の祭り"とも言われているのよ」
そう。これはバイトを受けた後に聞いた話なんだけれども。(この時点で詐欺だと思ったわ!)
この祭りにはもう一つ人々の間で囁かれる言い伝えがあったのだ。
それは要約するとこんな内容だった。
──その昔、この国にはそれはそれは美しい乙女がいたそうで。
彼女には行く末を誓い合った恋人がいたんだけど、両親の反対があって、残念ながらその想い人と結ばれることはなかったらしい。
彼女は悩み苦しんだ末に、願いが叶うとされるブルーロータスを抱えながら、サンドラ川へ身投げしてしまったという。
神はそんな彼女を憐れみ、天に召し上げて下界の報われない恋を見守り、加護を与えるよう宣ったのだ。
…とまあ、こんな感じ。
だから、サンドラ川へロータスを浮かべるのは年若い男女が多く、その大半が恋の願い事をするという。
何とまあ、ありがちな言い伝えというか。