第8章 決意
──人は、簡単に死んでしまう。
昨日まで隣で笑っていた人ですら、今日も一緒に笑いあえるとは限らない。
ポアロ教会でも、商船でもそうだった。
あたしは痛いほどそのことを知っていたはずなのに、大切な友達を失って、今死にたいくらい後悔している。
あの時ああしていれば。
彼を失わずに済んだのではないかって。
あれ以来、ずっと。
祖国本島の教会で、マザーが言っていたことを思い出す。
『私はついさっき、人生でこれほどないというほどの後悔をしました。あの子に会いにいけばよかったと』
…あたしに思い当たることはないだろうか。
あの人に何かあっても、あたしは本当に後悔しないだろうか。
『あなたの探すものが何かは分かりませんが、私のような後悔がないように生きてほしいと思います』
あたしの知らないところで、
あたしの大切な人が。あの人が、もし──。
あたしはあの時と全く同じことを考えて、そして気付いた。
…そんなの、耐えられない。
そんなの、死んでも死にきれないくらい後悔する。するに決まってるじゃないの。
自然と言葉が零れ落ちる。
あの時は出なかったその言葉が。
「もう一度、ローに会いたい…」
ぼろぼろと溢れる涙をそのままに、あたしは思うままにビビに想いを打ち明けた。
あたし、最近泣き虫だ。
だけど溢れ出した想いが止まらない。
今まで声に出さないようにしていただけに、一度認めてしまうとダメだった。
──あたしはこれほどまでに、あなたに会いたい。
「っ、あいたいの……っ」
ビビは黙ってそれを聞いてから、やがてあたしの頭を撫でて、
「じゃあ、会いに行くしかないね。あなたは自由なんだもの」
そう言って優しく笑ったのだった。