第8章 決意
クスクスとひとしきり笑ったあと、ナーティが少し真面目な顔になって話題を変えた。
「そういや、トラ、お前、この後どうする?」
そう、だよね。
行くところが見つかるまでここにいて良いってビビは言うけど、流石にいつまでもそれに甘えるわけにはいかない。
これから、どうするか。
もうそろそろあたしもちゃんと考えないと。
黙り込んでしまったあたしに対して、ナーティは軽く言ってのけた。
「アタシ、このままアラバスタで働こうかと思ってるんだよね」
「え?」
「もともと家族も帰る場所もないし、1人でふらふら旅してただけだからさ。わざわざノースブルーに帰る必要もねぇかなと思って」
そう言ってちょっと笑ってから、言葉を続ける。
「…この国さ、レインベースっていう街にカジノがあるんだよ。しばらく休業してたみたいなんだけど、最近また営業再開したらしくて。そこで働かせてもらうのもいいなって、今考えてる」
ナーティは淡々と話して、了承を得るようにちらっとビビを見た。
「もちろん、私は大歓迎よ。ナーティからそう言ってもらえたとき、すごく嬉しかったもの。あそこを笑顔あふれる場所にしてくれたら、どんなにいいか」
ビビも嬉しそうに微笑む。
そっか、そうだよね。
ナーティはもともとディーラーとしていろんな場所で生きていける腕があるんだ。
「素敵だね、それ」
あたしも賛成しながら、ちょっと寂しい気持ちもしないでもなかった。
ナーティとずっと一緒にいられると思っていたわけではないけれど、自分のゆく道を自分で決めるナーティにあたしとは違う何かを感じずにはいられなかったのだ。
そっかぁ…。
あたしだけ何も考えられていなくて、ちょっと置いていかれたような気持ちになっているのかも知れない。
「あたしも、もうちょっと考えてみるね」
果たして、ノースブルーには帰れるんだろうか。
ビビになんとかお願いしたらそういう手段もあるのかもしれないけれど、そこまでお世話になるわけにはいかない。
だって、この数週間、アラバスタの現状についていろんなところから聞こえてきてしまったから。