第8章 決意
…そうやって日々を過ごして、わざと明るく振る舞った。
気持ちが落ち込まないようにするために必死だった。
思い出すたびに涙がこぼれそうになるけれど、泣いてもマリーは戻ってこないから。
苦しい気持ちにのまれて、マリーと過ごした日々までを悲しい思い出にしたくなかった。
そんなあたしに二人も多分気づいていて、だからこそ毎日ちょっとしたことでも報告しに来てくれる。二人の優しさがうれしい。
「顔色もだいぶいいわね。もうそろそろ外に出てもいいんじゃないかしら?明日あたり天気がよかったらアウラも街に出てみましょうよ」
「ほんと?うれしい。あたしもこれ以上ベッドにいたら歩けなくなっちゃいそうな気がしてたの」
ナーティが近くの椅子に腰を下ろしてニヤリと笑う。
「トラ、街に出ても騒ぎ起こすなよ」
「お、起こさないよ!」
精一杯否定するけど、あたしも少し前の自分を思い出して自信がなくなる。船の上でやりたい放題してたからな、あたし。
ビビも楽しそうに笑いながら、
「ナーティからあなたがどれだけおてんばかって散々聞かされたんだもの。騒ぎの一つや二つくらい起こしてほしい気もするけどね」
なんてことを言う。
この人本当にこの国のお姫様??
あたしは半ば呆れながらビビを見た。
「それ、ビビが言うことじゃないと思う」
そして3人で顔を見合わせて笑う。
なんか、こういうのいいな。
教会にいたころ、女の子は比較的早くにもらわれて行っちゃったから、ずっと年頃の女友達が欲しかったんだ。