第8章 決意
きっと今のあたしを見たら、
『何泣いてんの』
そう言って呆れたように笑うんでしょう。
呆れてもいい。馬鹿にしてもいい。
憎まれ口も我慢するから。
だから。
「戻ってきて…っ。そばにいてよ」
声を上げて子供のように泣きじゃくっても、彼の声はどこからも聞こえなかった。
──大切な、友達だった。
彼と初めて会った時、仲良くなれると直感したの。
きっと、彼の醸し出すミステリアスな雰囲気だったり、
ピンチの時に頼りになるあの聡明な眼差しだったり、
憎まれ口の間にもにじみ出る優しさだったり。
そういうものに、どうしようもなく惹かれていたんだと、今になって気付く。
『──友達、悪くないね』
そう言って笑う彼は、あたしの隣にいない。
──もう、どこにもいないの。
あたしはその日、涙と声が枯れるまでひたすらに泣いて、そして太陽がすっかり沈んで闇が満ちた頃、全てを手放して深い眠りに落ちたのだった。