第8章 決意
──結局。
彼が考えていたことは最後まで分からなかった。
いつもあたしよりずっと先を見つめていた人。
全く話についていけないあたしを少し馬鹿にしたように笑って。
ちょっとため息をついてから、いつもあたしにも分かるように説明してくれた。
いつも冷静で、たまに憎まれ口を叩いて、あたしとナーティの掛け合いに困ったように笑った、そんな人。
記憶の中のマリーはずっと鮮明で、今隣で笑っていないことの方がおかしいと思えるくらいで。
そんなことを考えてから、あたしはマリーを全部過去形で思い出していたことに気づいて、1人で愕然とした。
なんで…。
海軍船。海賊。爆破。
あたしを押して、船に残った彼。
『あの状況では誰も助からなかった』という言葉。
そして、何より、“今ここにいない”ということ。
その事実から分かることなんて、そんなの一つしかなくて。
信じたくなかっただけで。
気づかないふりをしただけで。
あたしは心のどこかで…。
──マリーはもう、どこにもいない。
その事実を、認めていたのだった。
頬を熱いものがつたって落ちた。
一粒溢れると、もう歯止めは効かなかった。
「…っ、マリー…っ…」
ぼろぼろと流れ落ちる涙をそのままに、あたしは黒のキャスケット帽にしがみつくようにして、声を殺して泣いた。