第8章 決意
顔から血の気が引いていくのが自分でもわかった。
あの時、マリーはあたしだけを突き落とした。
だけどマリーのことだからきっと何か考えがあって。
最後にあの海賊船で何かをしたくて、それであんなことをしたんだと思ったの。
だけど今の話が本当なら。
海軍が、海賊船を爆破してしまったのなら。
「それじゃ、マリーは…」
呆然とした顔でナーティを見つめる。
ナーティはそれには返事をしなかった。
だけど、ただ一言。
あの状況では誰も助からなかったと思う、とだけ。
…そんなの、嘘だ。
マリーはきっとあの時、うまく逃げたに決まってる。
あのマリーだよ?そんな易々と死んでしまうなんてそんなわけないでしょう。
だって彼、最後に、また会おうってそう言ったんだもの。生きてるに、決まってるんだから。
ナーティの話が信じきれなくて涙もこぼれない。
そんなあたしに、ナーティは沈んだ顔で一つため息をこぼしてから、食べ終わった食器を片付けた。
そして去り際に、あたしのおろした長い髪を見て少し笑いながらこう言ったのだった。
「トラ、お前やっぱそっちの方が似合ってるよ」