第8章 決意
はつらつとした明るい声がなくなると、部屋が急に静かになった気がした。
あたしは目を開けてぼんやり考える。
「あれから三日、経ったんだ」
誰に言うでもなくぽつり、つぶやくと、
「そうだぜ。トラ、お前寝過ぎ」
聞き慣れた声で返答がきてびっくりする。
慌てて頭を動かしてみると、
「ナーティ!」
健康的な肌の色の少女が白い歯を見せて笑っていた。出会った頃ベリーショートだった髪は少し伸びていつの間にか肩にかかるくらいになっている。
「さっき姫さんが起きたって教えてくれた。調子はどう?」
「体は上々とは言えないけど、気分はいいよ。ナーティは…元気そうだね」
「まあね。アタシは怪我してなかったし。腹減りすぎて死にそうだったけど、ここのお姫さんがたんまり食べさせてくれたからそれも解決」
そう言って満足げに笑う。
続けて、トラも起きたんならなんか食え、とあたしをゆっくり支え起こしてくれたのだった。
ナーティが運んできた食べ物はスープやら果物やら消化に良さそうなものばかりだった。
それらが全部綺麗な器に盛り付けられていた。目の前に置かれた瞬間から温かい湯気に交じって、優しいミルクの香りが漂ってくる。
一口食べた瞬間、とてつもなくお腹が空いていたことを思い出してスプーンを運ぶ手が止まらなくなった。
これもあのビビというお姫様が手配してくれたらしく、気の知れた仲間の方があたしの気も休まるだろうということでナーティを呼び出してくれたみたいだった。
何というか、細やかな気遣いが身に染みる。