第7章 最悪と最善
──それを。
こんな時に無理やり思い出させて、あたしにどうしろっていうのよ。
こんな、死を覚悟した時に。
これが走馬灯ってやつならもうちょっとマシなやつにしてほしかった。
どうしてこんな、気づきたくもない感情を思い出させるのよ。
…ローの、ばかやろう。
あたしはまた、気づかなかったフリをしないといけないじゃないの。
だって今更、仕方ないことだから。
今更気づいたところで、どうしようもないことだから。
苦しくなるだけなら、忘れたままでいさせて。
だから代わりにこう思う。
このくらいはいいよね。
──あぁ、死ぬ前にもう一度あなたに会いたかった。