第1章 夢
「待ってね、今日の船でやってきてると思うから後ろの箱見てくるわ」
「ありがとう!」
メリダさんが戻ってくるまでの間、店頭に並んだ色鮮やかな果物たちを眺めてどれか追加で買って帰ろうかなんて考えてみた。
どれがいいかなぁ。
みんなで分けれるものがいいけど…。
順に見ているとまるまるとした真っ赤なりんごで目が止まる。次に、今朝の出来事がフラッシュバックした。
赤く熟れたりんご。赤く染まったライ。
シスターからの話。そして、結婚…。
ひぃっ!!
忘れてたのに。忘れてたのに!!
「あらあらどうしたの、変な顔して。あぁ、りんご?」
戻ってきたメリダさんはあたしと果物を見くらべて、全部承知したと言わんばかりにクスクスと笑った。
「今日ね、朝から買いに来たのよ。アイツたぶん寝坊して朝ご飯食ってねぇから、って」
誰が、とは言わないところが憎らしい。
メリダさんはクスクス笑いがこらえきれないまま、若いって素敵ねぇと呟いてバナナを渡してくれる。