第1章 夢
酒場やレストランはまだまだ営業しているけれど、アルメリアの街では八百屋や果物屋は暗くなる前に閉まってしまう。
教会の生活で必要なものは、自然とあたしが仕事からの帰り道で調達することになっているから、早く見て回らないと。
八百屋で安くなっている野菜を手当たり次第つかむと次々にカゴに放り込んでいく。育ち盛りのあの子たちは何でもパクパク食べるから、安くて量があるのが重要なのよね。
お肉や魚も買い込むと、最後に果物屋に寄った。
教会の子供たちは全部で15人いるけれど、みんなそろいもそろって甘いものが大好きだ。
特に上から14番目のベティはバナナが大好物で、ストックを用意していないとこの世の終わりかと思うくらいの悲痛な表情で号泣する。
あの小さな魔神を止めるためにも我が家でバナナは必須なのよね。
…と思ったけど、あれバナナが無いな。
売り切れ?
「メリダさん、バナナまだある?」
一応店主に確認してみる。
無かったら明日また買いに来ればいいかな。
ストックもまだあったと思うし。
そんなことを考えていると、棚の奥から少しぽっちゃりとした女性が顔をのぞかせた。
「あら、店頭にもう無い?」
身長があまり高くないからあたしの腰少し上くらいの棚からやっと顔が出る程度だ。
ずっと年上の人なのにその様子がどうにも愛嬌があって、以前そのまま可愛いと口にしたら、アウラに言われたくないわってコロコロと笑われた。
メリダさんに可愛さで勝てる人、この島にいないと思うけど。