第7章 最悪と最善
「起きろ。…おい、起きろ」
う、うぅ…ん。
聞き慣れた低い声に、ぼんやり薄めを目を開けると、そこには不機嫌に眉を寄せた青年。もとい、ローがいた。
「早く立て。今のでお前は10回は死んでいる」
何でローがこんなところに?
いや、違う。
…これは、昔の記憶だ。
あたし、この光景知ってるもん。
状況を思い出す。
ここはミカヅキ島の森の中。
いつものように、しばらくいなくなっていたローがふらりと戻ってきて、それでこうやって訓練という名の一方的な暴力を受けてて。
思い出すと同時にメラメラと怒りの炎が燃え上がった。
起きろって、そういえばこの時、ローがあたしを投げ飛ばしたんでしょうが!思いっきり!
それで木に頭ぶつけて気を失ってたあたしに向かって、その言い草はないでしょう!?
「もうちょっと手加減してよ」
怒鳴り散らそうかと思ったけど、余計頭が痛くなりそうだったからむすっとして声を出す。
そうしたらローは無表情のまま至極当然のように言ってのけた。
「手加減したら強くなれねェだろうが」