第7章 最悪と最善
──まるで、命を削られている音みたいだ。
あたしは他人事のようにそう思った。
あたし、死ぬのかな。
こんなところで、死んでしまうのかな。
死んだら、どうなるんだろう。
痛いのかな、やっぱり。
今もうすでにこんなに痛いけど。
視界が霞む。
甲板がぼやけて、聞こえてくる騒音も一段と遠くなった気がした。
ただ、自分の呼吸の音だけが脳に響く。
…みんな、ちゃんと逃げたかな。
死んだらもう会えないな、マリーにもナーティにも。
…ローにも。
薄れゆく意識の中で、最後に思い浮かんだのは、やっぱりあの黒い背中だった。