第7章 最悪と最善
「うッ……」
一瞬、なにが起きたのか分からなかった。
背後から聞こえたのはミシ、という微かな音。
いや、その前に気配を感じたのかもしれない。
とにかく、ほとんど直感で振り返る間際、何かが地面を突き破るのが見えた。
分かったのはそれだけ。
気づいた時にはあたしは地面に転がっていた。
一瞬の後、脇腹にとてつもない激痛が走る。
痛い…!というより熱い!!
どろり、と地面に流れる赤を見て、初めて紐で貫かれたのだと分かった。
「……ッ…」
咄嗟に身を捻ったのが良かったのか。それは分からなかったけど、なんとか致命傷はまぬがれたみたい。
とは言ってもこの血の量は流石に穏やかではない。
起き上がりながら必死で考える。
多分、さっき地面に突き刺さった紐が船内を通って、背後からあたしを突き刺したんだ。
常に考え続けなければ。
相手は思ったより冷静だし、冷酷だ。
油断をしたら、負ける。
──すなわち、死ぬ。