第7章 最悪と最善
「おりゃああっ!!」
思いっきり飛び込んだの。
風を受けて膨らんでいる、黒い帆めがけて。
構えていた刀をありったけの力で帆に突き立て、あとは重力に任せて、
ビリリリリリリリリッ
──一気に甲板まで降下する。
目論見通り、真っ二つに裂ける船の帆。風を受けなくなって、船は見るからに速度を失っていく。
うまくいって喜ぶところなんだけど、
「うわわわわわ」
……降り方まで考えてなかったあたしはそれどころじゃなかった。
ど、どうしよう!とまんない!!
思ったより切れ味がよく、ぐんぐんせまる地面に息を呑んだ。その時、カクン、と何か(たぶんロープ!)に引っかかる。
反動で腕を痛めるその前に、あたしは思い切って刀から手を離した。
思ったより地面が近くて助かった。
あたしはタンっと軽快に着地すると、ひとつ息を吐く。
一瞬、空気が止まった。
海賊たちの唖然とした顔をみてあたしも納得する。
そりゃそうだろう。
まさかね、あたしもやってみて驚いたよ。
こんな上手くいくなんて。
大道芸人顔負けのアクロバットを見せつけて、自分のやったことにひとつ頷く。
よし、これでほとんどの海賊がこっちに注意を向けてるし、船の進行も遅らせられたはず。
「じゃ!」
あとは逃げるが勝ち!そう言わんばかりに、そそくさと退散しようとすると。