第7章 最悪と最善
進路はうまく変更できたけど、航海は全然順調じゃなかった。
つまりどういうことかと言うと、アラバスタへ行くには、この船には食糧が圧倒的に足りなかったのだ。
あたしたちはアラバスタがこんなに遠いなんて思ってなかったし、ましてや海賊たちもこんな長旅になるとは思ってなかったみたい。
海賊たちは食糧が少なくなっていると気づくや否や、捕虜のあたしたちの分からあからさまに削っていった。
おかげで、あたしたちはここ数日、1日にパンひとかけくらいの食べ物にしかありつけていない。
「ニク、食いてぇ…」
「そんなこと言うなよ。余計つらくなるだろ」
「言っても言わなくてもつらいのは変わんねーよ」
掠れた声でうめくナーティを見てるとあたしも泣きたくなる。
あたし、てっきり、アラバスタはグランドライン入ってすぐにあるもんだと思い込んでたのよ。まさか、こんなに遠いだなんて。
「こんだけ腹が減ってりゃ寝ることもできねぇし。くそっ。あいつら普段あんだけ威張り散らしてるんだから海獣くらい捕まえろよ!」
「ちょ、しーっ。声でかいって。あともうちょっとで着くはずだよ…たぶん」
いつかと逆だななんて思いながら、気休めにもならない言葉でナーティをなだめる。
本当にもうちょっとで着くかどうかなんて誰にもわからないのに。自分で言いながら逆に気が滅入ってしまいそうよ。