第6章 海賊
動揺を隠せないあたしにお構いなく、
「まあけど、さすがにあの巨体に蹴りをぶちかましたのは驚いた。よく逃げれたよな」
ナーティはあっさり話題を変えた。
さして興味はなかったみたい。
少しほっとして、あたしもそれに乗る。
「それ、気になってたんだよな。なんて言うか…あいつ、一瞬力が抜けてるみたいだった」
そう。リボルバーを弾き飛ばした時も、脳天に踵を落とした時も、違和感を感じたの。
能力者があんな簡単にやられるもの?
丸腰の小娘相手に?
あたしには、一瞬、気が抜けたように船長の力が緩んだ気がしたの。ほんの一瞬だったけど。
でも実際、あの時アイツも不審そうな顔してたよね。
あれはどうして力が抜けたのか不思議に思っている顔じゃなかった?実力で言えば負けるはずないのに、って。
「奇遇だな、側から見ててアタシもそう思ったよ」
「力が抜けたって?」
しばらくの沈黙の後、ナーティは独り言のように呟いた。
「能力者は海に弱いらしい」
「うん、それは有名な話だな、知ってる」
「じゃあ、その海と同じエネルギーを発する鉱石があるってのは知ってるか?」
何それ。それは知らない。
そんなものがあるの??
「今日気づいたんだけど、トラ、足になんか付けてるよな」
足…あ。
ひも飾りのことか。
「それがどうか…………え?」
「いや…。ま、そんなわけねぇよな。第一、そんな石が本当に実在するのかもわかんねぇし。…今のはアタシの独り言だから忘れていいよ」
ナーティはもうあたしと話す気はないみたいだった。早く寝ろよ、と最後に呟きが聞こえて、また静寂が訪れた。