第6章 海賊
「トラ、昼のやつ、どこで習ったの」
息がかかるくらい近くから、ナーティの囁き声が聞こえた。あたしが起きてるのに気づいていたみたいだ。
ちょうどローのことを考えていたから、聞かれていたみたいで少し恥ずかしくなる。
「…昔、教えてくれた人がいた」
ぽつり、それだけ答える。
「ふうん、どんなやつ?」
そう聞かれて、ローのことをどう説明しようか迷う。どんなやつって、そりゃあ……。
「手加減知らなくて、無愛想で、不器用な人。……だけど、とんでもなく強くて、あと……優しい人」
最後に付け加えたのは、お情けってやつ。
あんまり悪口ばっかりだと可哀そうだから。
ナーティの表情は見えなかったけど、微かに笑ったような気がした。
「そいつ、お前の大事な人なんだな。…なーんだ、アタシ、てっきりそっちのにーちゃんとデキてんのかと思ってた」
「え!?!?!?」
「ばっ…か、でかい声出すなよ」
「ナ、ナーティがわけわかんないこと言うからだろ」
予想外の返答に慌てふためくあたし。
ローが大切な人っていうのは間違ってない。
間違ってない。けど、改めて言われると、これはかなり恥ずかしい!
しかも、マリーとなんだって??
勘弁してよって言う呆れ顔のマリーが容易に想像つく。あぁ、どうかマリーが起きていませんように。