第6章 海賊
ナーティは、このひも飾りに何かあるんじゃないのか?って、そう言いたかったんだよね。
これが当たったせいでアイツの力が弱くなったんじゃないのかって。
あたしは無意識に足首のひも飾りを触りながら、一人考える。
でもそんな大層なものかなぁ、これ。
ただの飾りにしか見えないけど。
そうは思ってみるものの、だけど何かが引っかかるのも確かだった。
どうでもいい、気にしないと思っても、心のどこかで違和感を感じる自分がいる。
そもそもこれをくれたのは誰だっけ。
外しちゃいけないって言ったのは、本当に夢の中のあの人?それともやっぱり別の人?
これ、なんで外したらいけないんだろう。
一回外してみようか……………いや。
…外したくない。
そう。そうなのよ。
あたしだって、今までに何度も外そうかと思ったことはあった。これはなんだろう?なんでつけてるんだろう?って。
だけど、外すことを考えると胸騒ぎがするのよ。
まるでいけないことをしているような。
それは罪悪感というよりもむしろ、恐怖の方が近くて。
だめだよって心の中で何かが叫ぶの。
夢の中のあの人とローが言った「外すな」という言葉が頭の中でぐるぐる回る。
外さないよ。外さないけど…。
目を閉じて2人の面影を探す。
──どうして外したらいけないの?
お願い。教えてよ…。
考えるうちに思考が徐々に薄まっていく。
やがてあたしの意識は部屋の闇より深い暗闇の底に、ゆっくりと落ちていったのだった。
海賊船に乗ってから1ヶ月が過ぎた。
ようやく脱出に向けて一歩前進した日。
久しぶりに深い眠りだった。
いつもの大きなあの人の夢を見た気がしたけど、
───朝起きた時には全て忘れていた。
第6章 『海賊』 <END>