第6章 海賊
「あんたってほんとバッカだよな」
心底呆れた声を出すのはナーティ。
「まあまあ。この考え無しが結果的には良かったわけだし」
慰めているのか貶してるのかわかんないマリーのフォロー。
「…こっちは死ぬかと思ったんだからもっと優しい言葉があってもいいと思う」
むすっとした声を出すのは、このあたし。
「ふふ、でもよかった」
とりあえず不貞腐れてはみたものの、作戦が上手くいったことを思い出して自然と頬が緩む。
そう。あたしたちの作戦、エターナルポースのすり替えは無事完了した。
ナーティが言うには、航海士が上着のポケットにエターナルポースを入れていて、何と船の修繕中、上着はずっとデッキの手すりに掛けられていたらしい。
極め付けに、あたしが騒動を起こしたことで、航海士は持ち場を離れ、その間に首尾よく入れ替えることができた、とのこと。
そんなうまい話ってある??
にわかに信じがたいけれど、これは日頃の行いが良いってことかな。
ちなみに、エターナルポースの中の球体だけ入れ替え、不要になった方は海に投げ入れて処分したらしい。
「ま、誰かさんが大暴れしてくれたのは確かに助かったかもな」
ナーティは面白そうに言って、片目を瞑ってみせた。
「初めからそう言ってくれればいいのに。あ、そうだ。最後助けてくれたのはマリーだよな」
思い出してマリーを見る。
売った方が金になる、と一番はじめに聞こえた声。あの一言であたしの命は助かったと言っても良い。
聞き間違いようがない。
あの声は確かにマリーだった。
「あのままだと誰かさんが酷い目に合いそうだったから」
ナーティの真似をして片目を瞑ってみせるマリー。
そして、3人で目を合わせて笑う。
──あたしたち、意外といいチームワークかもしれない。
大はしゃぎするわけにはいかないけれど、その日、あたしたちは勝利の喜びを密やかに分かち合ったのだった。