第6章 海賊
一瞬。見間違いかと思ったけど確かに、
──奴の腕が、"ほどけた"の。
気づいた時には、あたしは地面から2メートルぐらいの位置で逆さ吊りで宙に浮いていた。
咄嗟に帽子を押さえる。宙吊りにされた瞬間飛んでいかなかったのは奇跡だ。
状況は理解したけど、何でこんなことになっているのか全く分かんない。
片足に絡まっているものを見てますます混乱する。
…紐?
ぐぅーーーん
あたしを逆さ吊りにしている奴の顔が近づいてきた。と思ったけど、いや、違う。
あたしが移動してるんだ!
「能力者ってそういうこと!」
ここにきてようやくマリーの忠告に納得がいった。
あたしを掴んでるのは、奴の"腕"なんだ。
腕が解けて直径1センチほどの紐になって、あたしの足に絡みつき宙吊りにしている。言ってみたら奇妙だけど、実際その通りとしか言いようがないんだもん。
「お前なァに見てたんだ?」
息がかかりそうなくらい近くに赤黒い顔。
酒臭くて思わず顔を顰める。
「見てねぇよ、放せ」
意識しなくても声が低くなる。
不快だ。
酒臭いのも。酔った顔も。この体勢も。
はやく放せと言わんばかりににらみつけてやると、
「生意気だなぁ〜?」
カチャリ
「おまえ。死ぬか?」
──向けられたのは、小型の銃。