第6章 海賊
決行は翌日に決まった。
船の修理の手伝いという、あたしたちにとって絶好のチャンスが到来したからだ。
マリーの言った通り、リヴァースマウンテンを越えたせいで海賊船は思った以上に損傷していた。
マストは折れ、外装は剥がれ、甲板には大きく穴が空いている。
船底に穴が空いていなかったのだけが、不幸中の幸いといったところ。(空いてたら沈んじゃうからね。)
しかも、海賊船のクルーたちもかなりの数が波に持って行かれたようだった。
2、30人ほどいたはずだったのに、どう見積もっても1/3くらいの人数が消えていた。
つまり、深刻な船の損傷と人手不足に見舞われた海賊たちは、たまたま船に乗せていた商品(あたしたちのことね)に、船の修理を手伝わさざるを得なかったってわけ。
救命ボートで逃げるなんて心配も無くなったから、彼らも少し警戒を解いたのかもしれない。グランドラインに救命ボートなんかで乗り出せば数メートルで即死だからね。
そんなこんなで、数日、いや、数週間ぶり?に甲板に出たあたしは、外の空気を目一杯吸い込んだ。
新鮮な空気が肺に満ちる。
太陽の光が目に眩しい。
空ってこんなに青かったっけ。
「じゃ、手筈通りにね」
ナーティがこそっと囁いて自分の持ち場に走っていく。
それに頷き、あたしは昨晩3人で話し合った内容を頭の中で反芻してみる。
まずは、3人バラバラになって、奴らのポースの形状と、船長か航海士どちらが持っているかを見極める。
それが分かれば連絡を取り合い、場合によってはナーティと持ち場を交換する。
そんでもって、あたしとマリーが囮役になって海賊たちの注意を引きつけ、その間にナーティがアラバスタのエターナルポースとすり替える。
至ってシンプルな作戦。
あんまり難しいのは覚えられないからね。
うん、よし。大丈夫。
このくらいならあたしでもやれそう。
拳を握りしめて気合を入れる。
そんなあたしに、マリーはやれやれといった調子で声をかけた。
「あんまり張り切ってると逆に不自然だよ。それと───」
そして、最後に忠告を一つだけ残して、海賊たちに割り当てられた持ち場に向かって行ったのだった。