第1章 夢
今朝通り抜けてきた街はアルメリアという名前で、ミカヅキ島では一番大きな街。
と言っても、この島には2つしか街がないわけだから、必然的にもう一つの方が一番小さい街になる。
港から向かって西側にある小さい方の街はデルフィニウムと言った。
島民はその二つの街を愛称をこめて赤街、青街と呼んだりもする。
遠い海の向こうからきた積荷は、主にこの二つの街にふり分けられ、代わって二つの街から集められた商品や農作物が商船にのって海の向こうに消えていく。
そうやってこの島の交易が成り立っていた。
特に名産品があるわけでもないのに、この島の人たちが丹精込めてつくった農作物や工芸品は一部の裕福な層に高値で売れるらしい。島民の誠実さや勤勉さのたまものって感じで素敵よね。
そんな島民の生活を肌で感じながら働く――この港の仕事が、あたしはたまらなく好きだった。
教会での小さい子たちに囲まれる暮らしと真反対と言っても過言でないむさ苦しい環境だけど、人々の活気に触れて気力がみなぎる気がする。
こんなわくわくすることって、ある?