第6章 海賊
上がる悲鳴。
ゴォォォォォオオ
船内まで聞こえてくる濁流の音。必死でマリーの足に捕まりながら、咄嗟にナーティを引き寄せる。
とてつもない揺れがしばらく続いた後、投げ飛ばされたのかと思うくらいの勢いで体が宙に浮いた。
人々が折り重なるように投げ出され、あたしたちの周りに空間ができる。
考えるよりも先に体が動いた。
あたしに捕まるよう2人に叫び、天井に叩きつけられる前に身を捻ってそのまま天井を蹴る。
そして、マリーとナーティを引き寄せたまま着地し、次に来る浮遊感を地面に這いつくばって耐えた。
部屋のあちこちから、人がぶつかりあう音と呻き声が充満していた。
懺悔するような姿勢で、心の中で誰も重症でないことを願う。
震えているのは振動のせいか、恐怖のせいか。
──助けてあげれなくてごめんなさい。
あたしはこの両手に入る分しか救えないの。
商船で海賊に襲われて死んでいった人。
焼かれて死んでいった人。
ごめんなさい。ごめんなさい。
『あんたはその両手でできることだけすれば十分って言っただろう?』
淡白で厳しくて、だけど優しい、あの海軍中将の声がした気がした。