第6章 海賊
「「…リヴァースマウンテン?」」
ぽつり、呟いてみる。
隣からも同じ音が聞こえた。
同じ言葉を発したナーティと思わず顔を見合わせる。一瞬の間の後、ナーティが初めて蒼白な顔をした。
「くそっ。行き先は偉大なる航路(グランドライン)か!」
え?まってよ。
あたしには事態の深刻さが全然わからないんだけど。
リヴァースマウンテン?山に行くの??
でも今ナーティはグランドラインって…。
「な、なぁ。リヴァースマウンテンって何?」
「グランドラインとレッドラインの接点に存在する山、だよ」
答えは後ろから返ってきた。
なんとか振り向いてマリーを見る。
マリーもいつになく深刻な顔をしていた。
ま、まってよ。
あたしだけ話についていけてない。
「も、もうちょっと詳しくお願い」
「つまり、リヴァースマウンテンはグランドラインの入り口ってことだよ。東西南北4つの海からグランドラインに入るには実質この山を越えるしかない。海賊たちが騒いでいる理由がこれだとしたら、十中八九、この船の行き先はグランドラインだろうね」
淡々と説明する声にあたしも段々と顔から血の気が引いていくのが分かった。それって、相当やばいんじゃないの?
「グランドラインに入ったらどうなる?」
今度は隣から、諦めたようなナーティの声。
「さぁね、どこかの島で奴隷市にでも出されんじゃないの。ノースブルーのどこかなら帰るのにそこまで苦労しねぇと思ってタカを括ってたんだけど、グランドラインとなりゃ話は変わるね。カームベルトを渡るには海軍船に乗らなきゃいけねぇから。ノースブルーに帰るのは良くて数年後、運が悪けりゃ一生帰れねぇかもな」
「そ、それは困る!!」
あたし、教会に帰らないといけないんだから!
運が悪けりゃ一生帰れない?冗談じゃない。
思わず大きい声を出してしまったけれど、今回はナーティは咎めなかった。
海賊が目下目標のリヴァースマウンテンを超えることに必死でこちらに気が向かないことが分かっていたのか、それとももうどうでも良くなかったのか、それは分からないけれど。