第6章 海賊
事態が動き出したのはそれからかなり経ってからだった。
連れ去られて何日経ったのかそれとも何週間経ったのか分からなくなり、人々の顔から完全に生気が失われた時。
甲板から大きな声が上がった。
歓声、いや狂声に近い。
浅い眠りを繰り返し、始終うつらうつらしていたあたしははっと顔を上げた。
日も差さない薄暗い部屋の中で数人が身動きするのが感じられた。
後ろでマリーが動く気配もする。
横を見ると野生動物のように少女が目を光らせていた。
「…何かあったっぽいね」
舌なめずりしそうな勢いで、その少女は呟く。
監禁されてから、特にすることもなく、座っている位置が近かったという理由だけでほんの少しだけ仲良くなった。
彼女は名をナーティと言った。歳は16。ここノースブルー出身で、賭け事をしながら一人で旅をしているらしい。
──突然、バタンと扉が開いた。
体臭と体温が籠り、空気の濁んだ部屋に新鮮な風が吹き抜ける。
急に入ってきた光にあたしは思わず目を細める。
なに…?
扉が開くのは1日数回のトイレと1日1回のご飯の時だけ。そう決まっていたはずなのに、時間を考えると今回はそのどちらとも違うようだ。
「おいお前ら!こっから揺れるから死なねぇようにどっかに捕まっとけ!…つっても頭を打つほどの隙間もないか」
ガッハッハっと笑いながら、扉を閉め、男が去る。逆光で顔は見えなかった。
だけど、喧騒の中、男の後ろから聞こえてきた単語をあたしは聞き逃さなかった。
きっとこれがさっきの歓声の理由だ。