第6章 海賊
背負っていた荷物は全て海賊どもに奪われ、あたしたちは船内の一室に無造作に詰め込まれた。
そこには、他の船から攫ってきたと思われる人たちが既にぎゅうぎゅうに押し込まれていた。
スペースなんてあったもんじゃ無い。
文字通り鮨詰め状態、だった。
あたしの後ろにはマリーが壁にもたれかかっていて、すぐ横には先程の少女がいた。
「ま、でも何日もこんなところに放置されて、そらフラストレーション溜まりまくり、だよな」
はぁ、と1つ溜息をつく彼女。
彼女も相当キているようだ。
「災難だらけよ…本当に」
あたしも同意するように頷いてみせると、少女はふと思い付いたように顔を上げた。
「あんた、もっとちゃんと男のフリしといた方が身のためだと思うよ。あんたほど顔がいいと味見してぇって思う輩も少なからずいると思うからね」
「味見…?なっ…」
言われた意味を理解して、思わず赤面する。
何か言おうと口を開くと、後ろからも声がした。
「彼女の言う通りだよ。せっかくその格好してるんだから、君はもうちょっと男らしく振る舞った方がいい。海賊どもの慰み者になりたくないなら、だけど」
振り返ってマリーを見ようとしたけど思うように体を動かせない。
あたしは代わりにうつむいた。しれっとそんなことを言う2人に、少し気まずくなったのかもしれない。
「…分かった」
確かに、旅の間、バレてもどっちでも、なんて気持ちでいたから、相当女の子の振る舞いに戻っていた気がする。
商船から連れてこられたのは女の人が大半だし、その中で何でよりによってあたしを選ぶのかは分かんないけど。
だけど、万が一にも、あ...味見なんてされたらたまったもんじゃないから、あたしは大人しく言うことを聞くことにした。